数日前、ある町工場で死体が見つかった。

第一発見者は偶然にも、『変質者がいる』との通報を受け、あたりを捜索していた警察官。

その死体には四肢がなく、木材を裁断する機械付近に手や足の残骸があった。

昨今、全国で多発している連続不審死事件の状況とよく似ていた。

その不可解さにお手上げ状態の警察は、早々に“自殺”として捜査を打ち切ってしまう。

「どう?」

「いいえ、知りません」

「あれ、キミが宇治木刑事と会った現場のはずだけど? 私が知らないと思ったの?」

「……あ、今思い出しました! そういえば、小さな工場の前だったな」

「誰かに訊いたんだろ? 宇治木の居場所を」

「そうです」

「誰に?」

「け、警視庁の人……」

「ほーう、おかしいね。普通、出先の場所なんて教えないよ」

「…………」

「キミはわかってたんじゃないの? 彼が来るって」

「へ?」

ウソにウソを上塗りしても、絶対に固まることはない。

せいぜい“ほころび”が生まれ、やがてそれは“滅び”に繋がる。

「手足を失くす事件が起きれば、その現場に宇治木が現れるのを知っていた。静岡から追いかけてきたと見せかけ、実は待ち伏せしていたんじゃないの?」

「ぃ言っている意味がよくわかりません!」

「この事件の被害者、本当はキミの友人なんだろ?」

「は? 僕、都内の高校生に知り合いなんていませんよ!」

「……私は、一言でも被害者が高校生なんて言ったかな?」

「……テ! テレビのニュースで観たんです!」

「それはおかしい。警察は報道の箝口令を敷いたはずだ」

「っ……」

「まぁいいさ。次にいこう」