翌日の夕方。
私は、とある高校の正門前にいた。
「さて、と……」
二日酔いの頭にムチを打つ。
これから私は、昨夜よりもさらに大きな勝負に出るからだ。
平然を装って校舎に侵入し、すれ違った女子生徒に訊ねてみた。
「もしかして、この学校に写真部ってあるかな?」
「……はい。ありますよ」
「申し訳ないんだけど、案内してもらってもいい?」
「は、はい……こっちです」
うしろを歩く私を何度も見ては、ほのかな愛想笑い。
明らかに不審がっている。
「ここです」
そう言って、そそくさと去っていく。
「ありがとう!」
も、きっとその耳には届いていないだろう。
部室のドアを勢いよく開けると、中にはふたりの生徒がいた。あんぐりと口を開けて。
「驚かせてすまないね! 前原くんはいるかな?」
「……ぁ、となりの暗室に」
「そっか」
「あのー、どなたですか?」
「私? 刑事だよ」
嘘も方便。彼らに危険が及ばないためにも必要な嘘だった。
「刑事!? じゃあ、ことみちゃんのことで」
「……ま、そういうこと。だから、ね?」
ふたりは視線を合わせただけで会話をし、自分の荷物をまとめる。
「お気遣いありがとう」
「いいえ! ちょうど帰ろうと思ってたんです」
彼らもまたそそくさと部室から出ていき、ヒソヒソ話をしながら廊下を歩いていく。
見えなくなったところでドアを閉め、鍵を掛けた。
「よしっ」
奥の方にもう1つ、小窓に黒いカーテンがしてある扉があった。
下から漏れる赤い光。
時折、中で黒い影が動く。
「ゴクッ」
息を呑んでからノックをした。