何軒も店を回り、やっとのことで個室のある居酒屋を見つける。
オーダーを取りに来た店員が襖を閉めると、独特な空気に包まれた。
まずはひょんな出会いに乾杯し、浦野との思い出話をつまみにする。
メインの料理が運ばれてくる前に、私は本題を切り出した。
「捜査資料をですか?!」
「うむ。今、持ってるか?」
「持ってますけど……」
「頼む! 見せてくれ!!」
「い、いくらあなたが大先輩でも、それはちょっと……」
彼が渋るのは当然だ。
ここは男らしく、勝負に出る。
「じゃあ、賭けをしよう!」
「賭け?」
長谷川菜摘を担当した刑事に電話をさせ、宇治木にこう質問させた。
『彼女が入院していた病院に、前原祐一郎は現れたか?』
その答えは……。
「どうだった?」
「……あなたの言ったとおりでした」
「だろ? 賭けは私の勝ち。前原ことみの捜査資料をありったけ、今ここで出してくれ」
宇治木は観念し、カバンから写真やファイルを取り出す。
「ぁ、これ関係無いや」
「それは?」
「ごく最近、都内で起こった連続不審死の資料ですけど?」
「貸せ!」
「ぇえ゛、ちょっと!」
まったく関連性の無いそれごとまとめて、テーブルの上に広げた。
「う~ん……」
見える。私には、その手がかりがパズルのピースに。
閉店ギリギリまで思考を凝らした結果、ある“疑惑”が浮かび上がった。
「何なんです? いったい……」
「強いて言うなら、刑事のカンかな」
宇治木の顔には、いくつもの“はてなマーク”が浮かび上がっていた。
「貴重な資料を見せてくれてありがとう。さ、今夜は飲もう!」
「……あの、ラストオーダー終わってますよ?」
「おっと、これは失敬!」