手帳を隠していた床下から、鼻の下あたりまで顔を出す磨理子。

よりよく捉えるために目をこすると、

ザッ――

すでに身体は這いでていた。

私の視線の先に気付いて、祐一郎も小屋を出てくる。

「いるん゛だろ、ここに!?」

「あ、あぁ」

私は膝をついた。

再会の歓喜でも、たとえ殺意を抱いていてもいい。

娘がこの胸に飛びつけるように。

「磨理子……」

視線を外せば、そばに寄ってくると敬太が教えてくれた。

だが、あまりにも会えたことがうれしくて、この目にいつまでも焼きつけていたい。

決して、怖くはない。ただ、消えてしまうのが恐い。

「磨理子、私のことがわかるか?」

「…………」

彼らには、ひとり芝居に見えているのだろう。

「オッサン、本当にいるんだよな?」

「あぁ、いるさ」

と、祐一郎は、私の小指に自らのそれを絡めた。

刹那。

「うわぁあ゛ぁ!」

あられもなく腰を抜かす。

私は、こんなにも愛おしいのに……。

そんな祐一郎を敬太が抱き起こし、こう言った。

「きっと、今夜が最期になる。一緒に見届けよう」

言葉の重みに気付いて、ふと目をやると、敬太もまた祐一郎の小指に繋いでいた。

「「ぁ゛!」」

見計らったように、磨理子は瞬間的に這い寄る。

「おいで。会いたかった……ずっと」

「…………」

まっすぐに見つめると、磨理子は微動だにしなくなった。

ルールに忠実なのか、それとも戸惑っているのか。

「磨理子、本当にすまなかったな。つらかったろ? 痛かったろ? もっ゛と早く、お前を助けら゛れたら……」