「ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・ン・ダ」



振り返るたび、むなしさという名の現実が待ち受ける。



「ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・ン・ダ」



それでも、私は唱え続けた。



「ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・ン・ダ」

と、次の瞬間!!

――パンッ!

電球が弾け、小屋の中が一瞬で闇に包まれる。

「ぉわ゛っ!」

「き、来た……」

――キイイィーーーーーンッ。

「ッ゛ッ゛」

突如、脳天まで貫くような耳鳴り。


ズ――


    ザザザザザザッ――

右か。


ズズズッ――  


 ザザザザザザッ――


左か。


ズズズッ――  


     ザザザザザザッ――


はたまた、うしろか。


     ズ――


ザザザザザザッ――


いや、前だ。

“ナニカ”が、小屋の周りを這徊したあと。

――ドンドンッ! ドンドンドンッ!

戸が激しく叩かれた。

「ヒイィ゛ー!」

恐れおののく祐一郎。

「…………」

敬太の声は聞こえてこない。

「磨理子なのか!?」

私は音を頼りに手さぐりで向かい、戸を開ける。

「磨……理子?」

そこに……娘は、いない。

遠い昔、そういえば、かくれんぼもよくした。

木や草むらの陰にいるんじゃないかと、大声で呼んでみる。

「磨理子―!」

だが、姿は見えない。

「はぁ」

落胆のため息とともに身体を反転させたとたん、私は言葉を失った。

「新八さん!? どうしたんですか!?」

あわてて私のあとに飛び出してきた、敬太のうしろ。

「……い、いる、そ、そこに」