いやぁ、驚いた。


家に帰って、マフィア様は何をしているのかと部屋を探していたら、僕の部屋を漁っているんですもの、驚きました。


「何してるんですか。」


「えっとね、」

「言わなくてもいいです。察しがつきます。」


千桜さんは、ベッドの下から手を引いて、僕のもとまで歩いて来た。


「涼、おかえり!ちゃんと肉じゃが作ったよ!」


「っ!」

なんとなく思ってはいたが、やっぱりそうだ。

最近分かってきたことなのだが、千桜さんはとにかく可愛いのだ。


声とか、仕草とか、揺れる髪とか、全てが。


まるで、恋をした気分だ。



「でもね、涼、僕ね、肉じゃが初めて作ったの。
 
 だから、美味しくない自信があるよ!」




「自信に思うところが違いますね。
 
 でも、ありがたいです。」


「おうおう、食べろ食べろー!」


結局僕はパトロールが終わって、すぐに帰って来た。千桜さんがいるし。



「今よそってあげる!座って待ってて!」



何故か楽しそうで、どうしたのかと聞いてみた。

「何故にそんな嬉しそうなんですか。」

「だってね、なんか新婚さんみたいで!」


あ、可愛い。すごい可愛い。


「新婚だと、嬉しいんですか?」




「だって、殺人マフィアなんかと結婚してくれる人なんていないから…。」

酷なことに、僕は納得してしまった。

「あの、肉じゃがまだですか。
 結構お腹空いてるんですけど、僕。」

「え、あ、うん。

 はい、どうぞ。」


自信がないと言っていたが、普通に美味しそうだった。

「腹下しても僕知らないからね。」

「じゃあ何で作ったんですか。」

一口、口の中に入れてみたが、
不味いどころか、とても美味しかった。

「やっぱマズい…?」

「貴方すごいですね、シェフですか?」

「褒めても何も出ないぞ。
 
 
 プリンもくれてやろう。」

「何も出ないのではなかったのですか。」

相変わらずボケる千桜さん。

突っ込むのは僕。こういうノリ、面白いかも。


「涼、風呂入って来い。
 一応沸かしといたからさ。」

「ありがとうございます、助かります…!」


「んで、僕は帰るね。食器は洗いたくない派なんで!
 
 涼に任せたぞ☆」

「え、あ、は、はい。

 明日はご予定でも?」






「…久々に、暴れる日なの。」

「…。」

「まぁ、明日になったらわかるよ。」

「そうですか。
 気を付けて帰って下さいね。」

「うん。」



またね、と言って帰って行った千桜さんは、
少し、悲しそうに見えた。


ちょっとだけ、気まずかった…。


明日には、また残酷なヒトになってしまうのだろうか。

でも、それでも僕は、あの人と友達でいるだろう。




やっぱり、恋かもしれない。

あぁ、どうして僕は、


マフィアに恋をしてしまったのだろう。


本来憎むべき相手に、恋をしてしまったのだろう。





僕は、どうすればいいんだよ。