なんだか、張り合ってるみたい。



「そろそろ出るぞ。紗千、お前は後ろに乗れ」

「え、あ、うん」



紗千…。
初めてそんな風に呼ばれた。
フルネームはあったけど、なんだかドキッとしてしまう。

演技だってわかってるけど。
なんで鹿島さん相手にこんなにドキドキしちゃうんだろう。


鹿島さん…竜の車に乗り込んでいざ出発。
チラリと後ろを見ると久住さんたちの乗る車も待機していた。


大掛かりなのだと目の当たりにしてつくづく思う。
久住さんも竜も、いいよって言ってくれたけど、本当に迷惑をかけてしまってる。

私のわがままで付き合わせてしまってるんだもん。



「鹿島さん、めっちゃイケメンじゃん。いいなぁ、あんなイケメンな親戚いるなんて」

「そうかな?」


後部座席の隣に座った菜穂が耳打ちしてくる。
確かに竜はイケメンだ。
私も初めて見た時そう思ったもん。
性格に難はあるけど。