冷に見られる前に…早くお風呂へ行かなきゃ。


─グイっ


「きゃあっ」


お風呂へ駆け込もうとした私の腕は、冷に引っ張られて、そのまま冷に抱き寄せられる形になった。


「れ、冷…?」


「俺の前で泣きそうな顔すんなっつっただろ。何もしてやれねぇ自分がムカつくから」


冷も、私と同じような表情だった。


「ごめん……。でも、私…明日からはあの家に戻るから……」


戻りたくない。


けど、お母さんと冷を天秤にかけたら、お母さんの方に傾いてしまう……。


「帰んの?」


「………うん」


「あっそ。まぁ暇になったらまた来いよ」


ゆっくり、冷の体温が離れていく。