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「愛。近藤先生から全部聞いたわ。家に戻ってこない?こんなこと言いたくないけど、一緒に過ごせる日は残り少ないの」
落ち着いた頃、お母さんは凛とした声で言った。
凛とした声で言わなきゃ、声が震えるからだろうか。
「……そうだね…」
私は、冷といたい。
冷と一緒に過ごしていた日々は、本当に楽しかった。
冷をフッたくせに、まだ一緒にいたいって思うんだ。
自己チューなやつだね、私。
冷は、私と一緒に暮らしたくないよね。
私なら嫌だもん。
「………戻るよ。明日、お世話になってる人の家に荷物取りに行ってくるから」
本当は嫌だった。
一人ぼっちの寂しいこの家より、冷がいる明るいあの家の方が楽しいから。