「げっ」
ぼくはあわてて建物の陰に身を隠した。
首だけをそっとのばして、通りのほうに目をやった。
日が暮れて、街灯とネオンのあかりが通りをはなやかに照らしている。
通勤帰りの男女。通学帰りの少年少女。種々雑多な通行人でごったがえすなかに、彼女はいた。
背の高い男と腕を組み、しまりのない笑みを浮かべて歩いている。
美穂だ。
「うげっ」
よーく目をこらして見ても、それは美穂に違いなかった。
いっしょにいるのは、ぼくの知らない男だった。
「どうして……?」
ぼくはドキドキする心臓をなだめながら、ふたりのあとをつけた。