本屋さんの近くにあったカフェで彼女と向かい合って座る。

「別に、あんたに謝ってもらう必要ないんだけど」

なんて、めんどくさそうに言いながらもちゃんとあたしと話してくれるこの人は
優しい人なんだろうな。

「でも、勘違いされたままだとイヤだなと思って。あたし本当にリョウくんとは同じクラスなだけで前からリョウくんがずっと騙してたなんて誤解だから……」

彼女はあたしの言葉を聞きながら綺麗に飾られた爪でピンク色の箱から細い煙草を取り出した。

ライターで火をつけピンクの口紅が塗られた唇で煙草をくわえると

「そんなの、わかってる」

と、ぽつりと言って白い煙を吐き出した。

「えっ、わかってたんですか?」
「わかるよ。あの時のあんたの表情見たら本当になんもなかった事くらい」

わかってるならどうして、あんな事を言って出て行っちゃったの……?

彼女は白い指の間に挟んだ細い煙草の火種をぼんやりと見ながら静かに口を開いた。

「あたしさぁ、ずっと苦しかったんだよね……」