「……実花、どした?」

急に真剣な声で呼びかけられて慌てて顔をあげると、みゆきちゃんがあたしの事をのぞきこんでいた。

「へ? なに?」
「実花なんかぼーっとしてるから。前は西野の話になったら嬉しそうな顔して食いついてきたのに。なんかあった?」

心配そうなその顔にあたしは急いで笑顔を作る。

「ううん! 考え事してただけ! リョウくんをそんなに惚れさせる女の人ってどんな人なんだろうなぁって」

「あー、確かに興味ある! あの悪い男と付き合う女ってどんなんだろうね」
「やっぱお水系かなぁ?」
「意外と真面目で清楚な感じかもよ」

また盛り上がるみんなに笑顔で相槌を打ちながら、窓の外をながめた。

木蓮の大きな葉がバラバラと音をたてて風に飛ばされていくのがなんだか無性にさみしくて
缶の底に残ったココアを一気に飲み干した。



もし、
リョウくんの好きな人が
どんな人なのか知ることができたら


あたしは
この望みのない恋心も
きっぱり諦める事ができるのかな。