「年上の女と同棲してるとか、キャバ嬢に貢がせてるとか、寄ってくる女なら見境なしに手をだしちゃうとか」
「女の子をもてあそんですぐ捨てるとかね」
「あと、夜働いてるって噂もあるよね。ホストらしいとか」

彼女たちの口から次々と飛び出す彼の噂に驚いて、持っていたサンドイッチがぽとりと落ちた。

「うそ、噂でしょ? 年上の女の人に貢がせたり、ホストしたりなんて……」

とても同級生にまつわる噂とは思いえない単語に顔をしかめる。
……なんか、世界が違いすぎる。

「嘘じゃないって! 実花、あいつの隣の席なのに気付いたことない?」

みゆきちゃんがそう言いながら意味ありげに首を傾けて、人差し指で自分の首筋をトントンと叩く。

「ん?首?」

意味がわからず首をかしげるあたしに、みゆきちゃんはため息をつきながら囁いた。

「もう、実花は鈍いなぁ。キスマーク、あいついっつも首についてんの」
「キスマーク……?」

あたしはみゆきちゃんの言葉をぽかんとしてただ繰り返す。

「ほんと、いっつも首筋にキスマークつけて、毎晩なにやってんだよ!って感じだよね」
「そうそう! 昼間学校で寝ないで、夜おとなしく寝てろよって言ってやりたい」