ついそう言うとみゆきちゃんの表情が思いっきり険しくなった。

「リョウくんに、傘を、借りた?」
「い、いや、ほら急に雨が降ってきたから。偶然リョウくん傘を持ってたみたいでさぁ」

みゆきちゃんの眉間のシワの深さにうろたえながら、あたしはその場しのぎの言い訳を並べる。

「ふぅん。意外。血も涙もない最低な男だと思ったら実花に傘を貸す優しさがあるんだ」

あたしの言葉を聞いたみゆきちゃんは、まだ登校していない誰もいないリョウくんの席を見ながら不満そうにつぶやいた。


「それより! 昨日あたし地下鉄で加藤先生と彼女みたよ」

なんとか話題を変えようと思って思いついたことを口にする。
慌てすぎて声が大きくなったみたいであたしの言葉に近くにいたみんなが反応した。

「え、マジで? 加藤センセー彼女いるんだ!?」
「どんな人だった!?」

興味津々にくいついてきたみんなに、言った自分が驚いた。

「えっ? どんな人って……」

あぁ、しまった。
別にみんなに言いふらすつもりじゃなかったのに。