「あ、うん……」

慌てて手の中にあったココアを開ける。
口をつけたココアの甘さにまたじわりと涙が滲みそうになる。

「実はずっと西野の事好きだったんだ」

鼻をすすりながら暖かいココアを飲むあたしにみゆきちゃんは静かに言った。

「え? だってみゆきちゃん、あんなにリョウくんの事嫌ってたのに……」

戸惑いながらそう言うと

「高校入ったばっかりの頃、西野にひと目ぼれして告白したら思いっきり冷たく振られたんだよね」

缶の中のミルクティーを呷るように飲んで、ふぅーと大きく息をついた。


「もうすごい腹が立ってあんな冷たい男最低だって思ったのに、
振られた後も悔しいくらい気になっちゃうんだよね」

空になった缶をぎゅっと握りしめながら悔しそうにみゆきちゃんは笑った。

「勝手に目があいつを追っちゃって気付いたらいつも西野を見てる自分がいて
またそれが惨めに思えて悔しくて……」

わかるよ、その気持ち。
あたしもそうだった。

リョウくんは絶対あたしの事なんて好きにならないってわかってるのに
どうしても目が彼を追ってしまう。

心が勝手に惹きつけられるずるいくらい魅力的な男。



「だからさぁ、逆に嫌いになろうって
あいつの悪口ばっかり言ってた」