あたしは一度も彼を振り返ることなく逃げるように屋上を飛び出した。 やけに足跡の響く非常階段を駆け下りながらこらえきれず涙が溢れた。 冷え切った頬を伝う涙が焼けるように熱く感じて余計に悲しくなった。 その時―― 「実花!」 あたしを呼ぶ声が聞こえた。 「実花! なにしてんの?」 非常階段を下りてきたあたしを、みゆきちゃんが不思議そうな顔で見上げていた。 「……みゆきちゃん」