向かいのホームにいる彼女はそんなリョウくんの事を見て
まるで嗚咽を堪えるように口を押えていた。

今にも泣きそうな顔でリョウくんの事をみつめてる。


その時、向かいのホームに強い風が吹き込んできた。
遠くから聞こえてきたレールを走る車輪の音に不意に記憶がよみがえった。



あの人……
どこかで見たことがある……



地下鉄のホーム独特の
鉄っぽいニオイと
生暖かい湿気。


……あぁ、あたし前に地下鉄の中で
あの人を見たことがあるんだ。