顔を上げると目の前に社長の姿があった。

私の……王子様。

しかしハッと気づいた。

いくら社長に気づいてもらえたとしても
今はありえない。

廊下を濡らしているし
泣き顔に作業服。

どう考えてもドン引きされるような
姿でしかなかった。

「あ、あの……すぐに片付けますので
申し訳ありません」

私は、背中を向けて必死に謝罪をした。

せっかくなら素敵に着飾った自分を見てほしかった。
こんな姿ではなくて……。

また涙が溢れそうになる。

すると社長は、雑巾を持つと
一緒になって拭き出したじゃないか。

えっ……?

社長の思わない行動に驚いてしまった。