「強引な事をして悪かった。もう二度とあんな事はしないと約束するから許してくれないか」

胸の中がグルグルとかき回されたような感覚がして息苦しい。

もう私が圭吾さんに抱き締められる事もキスをされる事もない。

当たり前だ。

だって彼は私を好きじゃないもの。

圭吾さんは花怜さんのものだもの。

「もうとっくに許してますよ。だから花怜さんを裏切らないであげてください。もしも私が花怜さんなら……圭吾さんが他の人にキスをすると嫌だから……」

最後は顔を見ていられなくて、私は膝の上に視線を落とした。

「……分かった」

「あ、私、一度家に戻りますね」

「ああ」

圭吾さんが立ち上がった私を見た気配がしたけど、私はバッグに視線を向けたままで微笑んだ。

「じゃあ、またあとできます」

「……分かった」

病室をでてエレベーターに向かいながら思った。

ああ、なんて私はダメな人間なんだろうって。

凌央さんを好きになって、三ヶ月間だけの恋をしようとして、アシスタントに志願した。

なのにいつの間にか圭吾さんに心変わりしてしまっていたなんて。

そしてその圭吾さんには恋人がいる。

浅はかで愚かで、情けない。

今まで生きてきた中で、今の自分が一番嫌だと思った。

涙で前が見えなかった。