嘘……!どうしよう。

「峯岸さん……?どうかしたの?」

立花さんが、わずかに眉を寄せて私を見つめた。

「どうしたの、真っ青よ?」

「た、立花さん、どうしよう、私……圭吾さんが、倒れて、」

黙って私の話を聞いていた立花さんが、クッと顔をあげた。

「貸して。私が聞く」

言うや否や私のスマホに手を伸ばし、口を開く。

「お電話代わりました。私、峯岸さんの知り合いで立花と申します。彼女は少し動揺しておりますので私が代わりにうかがいます。はい、はい……」


*****

圭吾さんは夢川貿易から程近い総合病院に搬送されていた。

タクシーを降りると私は出来るだけ急いで人混みを縫い、エレベーターに乗り込むと彼の病室のある十階を押した。

どうしよう、圭吾さんに何かあったらどうしよう。

立花さんによると圭吾さんは救急搬送されたもののいまだ意識がなく、精密検査を受けた後も入院が必要になるという話だった。

どうしよう、悪い病気だったら。

絶対私のせいだ。

私が責めたから、家に帰り辛くなったんだ。

私と会いたくないから目一杯仕事を詰め込んでたんだ。

全部私が悪い。私のせいだ。

「彩様」

病室の前に黒須さんの姿を見つけて、私は少し頭を下げた。