……圭吾さんからの連絡は……ない。

今日は仕事だろうか。

それとも花怜さんとデートかな。

……仲直りはしたんだろうか。

そんなことを考えていると、たちまち圭吾さんに抱き締められた記憶が蘇った。

それから、キスも。

『彩』

耳元で、圭吾さんの苦しげな声が何度も何度も聞こえる。

「ッハ……」

水の中のような感覚に、私は思わず口を開けた。

なに?この胸の圧迫感は。

息が出来なくなりそうな激しい胸の鼓動は。

……圭吾さん、今頃何をしているんだろう。

その時だった。

「彩、悪い!コーヒーが切れてたんだ。寒い中申し訳ないんだがコンビニ行ってきてくれるか?」

「あ、はい!」

凌央さんは大のコーヒー好きで、いつも飲む直前に豆を引く。

「取り寄せたコーヒーを会社に忘れてきたんだ。豆の種類は問わないから」

「はい。すぐ行ってきますから凌央さんは作業進めてください」

こういう時のためのアシスタントだ。

私はリビングのソファから立ち上がるとコートに手を伸ばした。


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……今夜は冷える。

そういえば夕方のニュースの最後に気象予報士の女性が言ってたっけ。

今日は今年一番の冷え込みだって。