「いい、僕が」

「いいの。私がやります」

拾い上げたペットボトルをテーブルに置き手近なタオルで床の水を拭き取ると、私は圭吾さんを見上げた。

「大丈夫ですか?」

「……少し酒を飲んだだけだ」

再び圭吾さんが冷蔵庫へと手を伸ばした。

それから続ける。

「男の家に泊まり込むのか。クリスマスイブに」

トクン、と鼓動が跳ね上がった。

低くて小さいのに圭吾さんの声はなぜか響いた。

「個展の準備が……忙しくて」

「……嘘だ」

またドクンと心臓が脈打つ。

新しいペットボトルを煽った圭吾さんがゆっくりと私を振り返った。

「……嘘だ。そいつと過ごしたいんだろ?好きだから」

その顔は何故か苛立たしげで悲しげで、私は思わず息を飲んだ。

コクンと無意識に喉が鳴る。

どうして?どうしてこんな顔をするの?

もしかして花怜さんと何かあったんじゃないだろうか。

だとしたら、今度は私が相談に乗ってあげたい。

「何かあったんですか?……花怜さんと」

圭吾さんはそう問いかけた私を、驚いたように見つめた。

「圭吾さん、花怜さんと何かあったなら何でも言ってください。私はその……頼りないですけど……でも少しでも圭吾さんの心を軽くしてあげたいです」

「だったら」

かすれた声を出しながら圭吾さんが私に一歩近づいた。

それから私の腕を掴むと今度は反対の手を後頭部に回す。

「だったら……行くな」