悠琉は美陽の手を取り校門に近づく。
しかし悠琉からは声を掛けることはできなかった。
そこで悠琉は美陽に頼んだ。

「美陽、声を掛けてくれるだけでいいんだ」

傍にいる、と言葉ではなく行動で示す。
美陽は悠琉を見上げて少し不安そうに頷いた。

「…楽!」

美陽が楽の名前を呼ぶと楽は気づき美陽の方を見た。
楽は群れを割って前に出る。

「お前は美陽の何だ」

威嚇している楽に対して、悠琉は落ち着いた様子で話す。

「初めまして。美陽さんとお付き合いしている勝谷悠琉です」

楽の睨みが一層増した。
楽は美陽の方を向いて美陽に聞いた。

「それは本当か、美陽」

美陽は半歩下がって、悠琉の袖を掴みながら頷いた。

「…チッ、何でだよっ!」

急に楽が叫びだす。
ビクッと美陽は怯える。
怯える美陽を見てか、悠琉は楽の腕を掴んだ。

「離せよ!!」
「ここはギャラリーが多いから移動しよう。美陽も怖がっている…」

悠琉がそう言うと、楽の表情が一瞬、戸惑いを見せた。

「行こ、美陽」

悠琉は優しく微笑んで見せた。
美陽は少しホッとしたのか歩きだした悠琉の後ろを歩く。
楽は悠琉に引きずられているかのように自分で歩きはしなかった。