「社長の方は、断ったから。今は、何より美愛を優先したい。ただ向こうの仕事の方は……ごめん。大事なお客様とトラブったみたいで、俺が出ていかないとマジまずいことになりそうなんだ。……はぁっ……戻りたくない。やっと……やっと美愛をつかまえる一歩手前に……」


更に大きな体でキュッと私を抱き締めると、先程と同じく私の髪に頬を寄せてくる。

……明日なんてショックすぎ。

まさに天から真っ逆さま、暗い暗い海底にひとり沈んで行く気分。

じゃあ、もう今しか一緒にいられないの?

そんな……そんな……そんな……神様の意地悪!

そう思いながらも、トラブル発生じゃ仕方ない……副社長が、大事な仕事より恋愛優先じゃ正直引くし。


「大丈夫です。それにもう私の全部は、先輩のものですよ。でも……強くつかまえてて……」


私も広い背中に手を伸ばしちょい照れながら優しく包み込むと、頭上で微笑むのを感じた。そしていとおしむように頬を動かし、更に私を引き寄せてくれる。