「……べ、別に狙ってませんから。今まで狙ったこともないし」


「……ごめん」


俯きながらつい可愛くないこと口走る自分に嫌気がさす中、先輩は消えそうな声で謝ってくれた。


「……狙っていいよ、俺には。……けど俺だけにして」


「……」


その優しい言葉の響きは、私の強がる唇と心を一瞬で緩め堪らないほど切なさで揺らした。

ゆっくり顔を上げると、先輩の瞳から嫉妬の炎は消え失せ、代わりに恋の炎が浮かび上がり切なさが溢れるのを見た。

私は、その切ない光にまた泣きたくなるけれど、瞬きを繰り返し懸命に堪える。


「美愛……本当にごめん」


先輩は、そんな私に心から謝ると、揺らめく暖かな瞳と腕で優しく包み込んでくれる。