「病院……行ける?」


「……動けない」


目を瞑ったまま力無く答えると、先輩はしばし黙り込んだ後キッチンの方に歩いて行き、声を潜め
誰かに電話を掛け始めた。

私を気遣ってか、押さえ気味の早口で話続ける。

先輩の少し低めの良く通る声…… 目を閉じて聞くと一層心地いい。

その声に集中していると、少しずつ体が楽になりそう……

今の私には、どんな薬よりも一番の特効薬かもしれない。

最高の子守唄にもなりそう。

心地よい眠りに誘われていく私の頭に、ふと大きな掌が触れる。


「もう少しで医者に看てもらえるから安心して」


私は、先輩の柔らかな囁き声に微かに頷きながら、スーッと気持ち良く眠りに落ちていった。