タイムリープ

「えっ！」

私は、切れ長の目を限界まで見開いた。

ゾクゾクっと一瞬で私の背筋が凍り、恐怖で細い体が小刻みに震える。

「大好きな千春に、こんなことはしたくなかった。でも、しかたがないんだ。この世界で、千春ちゃんと僕が一緒になれないから………」

そう言って中年の男性はナイフの柄をぎゅっと握りしめたまま、私に一歩一歩迫る。

泣きながら不気味な笑みを浮かべている中年の男性の顔が、鈍色の刃に映る。私は、それがとても恐怖に感じた。

「千春ちゃん、僕のことを好きだと言ってくれ」

中年の男性は、懇願するような声で私に言った。

「私は、君のことが好…………」

私は、嘘をついて彼に好きと言おうと思った。が、

ーーーーーー優太ーーーーーー。

その瞬間、ほんとうに私の大好きな山田優太の姿が脳裏に浮かび上がった。

「私は、あなたのことを好きにはなれない」

私は、首を左右に振って拒絶した。その瞬間、私は死ぬと思った。

「あの世で一緒に幸せになろう、千春」

中年の男性はナイフの柄をさらに強く握って、私の左胸に向けた。

ーーーーーーグサリーーーーーー。