「えっ」
どうしてキミが。
そう言葉にする前に、彼の方から説明してくれた。
「吃驚しましたよ~、あなたが急に倒れちゃうから! 僕のおうちが近かったから、お父さんにここまで運んでもらったんです! あ、ご友人には先に帰ってもらったんですけど…………良かったですか?」
なんてこった。迷惑がっていないどころか、こちらに対するアフターフォローまでバッチリじゃないか。非の打ち所がない。
「で、あの……大丈夫ですか? ごめんなさい。僕が突き飛ばしちゃったから…………」
天使か。自分に鬱陶しく絡んできた女に、ここまで優しくできるなんて、凄いを通り越して最早神の領域である。
「いえ、お気になさらないで下さい。此度の件は、全て私の自業自得。あなたに非はありません。それに、謝罪をしなければいけないのはこちらの方です。周りの方やあなたのご家族にも、きっと多大なるご迷惑をおかけしたことでしょう。本当にすみませんでした」
ベッドから上半身を起こし、深く頭を下げた。
短くも長い沈黙が訪れ、一向に言葉を発さない少年を不思議に思い顔を上げると、彼はとても驚いた表情をしていた。