とくん
とくん


気持ちは早鐘のように鳴り響いた。


やっぱり、好き。

この気持ちは、どこにも失くせない、本物の気持ち。


私は、自分で気付かない内に、会場内に反響する音に負けないくらいの歓声を上げていた。



3度のアンコールを経て、ライヴは終わりを告げる。

私は、KAZUがいなくなってしまったその場所を、名残惜しく会場退出の規制が解けるまでジッと見つめていた。



あぁ…なんでこんなに愛しいの?


そして、なんで…なんで、あんなに吸い込まれそうな瞳で見つめてくれたんだろう?


分かってくれたのかな?
覚えいてくれたのかな?


そんな自惚れた勘違いをしてしまいそうなくらい、今夜のライヴは凄く良くて。

ヴォーカルのSHOWさんもハスキーな声がKAZUのギターにマッチしていて…って、本当に私はKAZUしか目に入っていないんだけど…。


そこまで考えてくすりと笑って、私はそれまで噛り付いていたポジションから離れた。 


そんな私の姿を、バーカウンターの方で由井せんぱい<達>が見てたとは露も知らずに。