鉛筆を止めて考えていると、ふと冬汰のある場面を思い出した。
寂しそうに、どこか悲しそうに空に手を伸ばしていたあの日の冬汰の姿が。
あの日、あたしは冬汰のことをもっと知りたいと思い始めた日だ。
隣で笑っていてほしいって思った。
これを絵にしたい…!
ざっと、メモ書きでスケッチブックに残した後、ギターを弾く冬汰の横に座って目を閉じ、冬汰の奏でる音に耳を澄ます。
6弦全て弾かずに弦を一音一音弾く音がする。
その主が心地よくてだんだん心が落ち着く…
何の歌のメロディかは分からないけど、どこか懐かしいようなメロディにも聴こえる。
今まで音楽に無関心だったけど、冬汰のギターを見てからは普段イヤホンで聴く音楽にも楽器の音に耳を向けるようになった。
エレキギターの音、ドラムの音、アコギの音、キーボードの音、たくさんの楽器があって、そのすべてが合わさってこそのメロディがあるんだって知った。
でも、アコギ一本で奏でる音も素敵…