冬汰は一瞬悲しそうに、あたしを見たあと雨空を見上げた…


ねぇ、どうしてそんなに悲しそうな顔をするの?


ねぇ…笑ってよ。


いっぱい、冬汰のこと教えてよ。


まるで消えちゃいそうな顔をするのやめてよ…



「冬汰は…何をしているのが好き?」



質問内容なんてなんでもいい。


とりあえず、こっちを向いて欲しかった。



『んー…ギターかもな』


「じゃぁさ、嫌いなものとかは?」


『んー…特には…』


「じゃぁさ、怖いものは?お化けとか!」


『お化けって…俺は、夢かもな。』



夢…?


過去に、ものすごく怖い夢でも見たのかな?


夢って不思議で、あたしは起きちゃうとほとんど見た夢を忘れてしまう。


いい夢なのに、忘れちゃう時があってショックする朝も多々で。



「どうして?」


『もう、覚めなかったらどうしようって』



そう言った冬汰は俯いて、小刻みに手が震えていた…


あたしはそっと、冬汰の震える手を握った…


あたしには、こんなことしかできない。


そんな自分に腹が立つ…



「ごめんね…
あたし、全然元気付けられてないね…」


『俺といても、楽しくねーだろ?』


「そんなことない!」


『俺は…お前といると…苦しい。』


「…ひくっ…ひくっ…」



気付けば涙が流れた…


外はさっきと変わり、土砂降りで…


もうその場にいられなくて、カバンを持って土砂降りの中を自転車で走った。


もう、涙なのか雨なのか分からなくて…



「バカだ…あたし。」



もう…会えない。


ごめんなさ…い。


知らない間に、冬汰を苦しめてた…