恋すら、まともに知らねぇし。


別に、知ろうとも思わない。


今でさえ、適当な女と遊んで飽きたら捨てる。


そんなもんだろって思ってる。


夏休み中ですら、適当な女と遊んで現に、捨てたばっかりだ。


遊びから、女に本気になれるだろって思った。


でも、そんなわけなかった。



「そうだね…笑わなきゃって思ってる。
好きな人のためにも。」


『好きな人…』


「うん。
だって、冬汰以外今は考えられないもん。
って…何あたし、冬汰と付き合ってたわけじゃないのに彼女ヅラしてるんだろね…」


『澪春?』



澪春を見ると、俯いて今にもまた泣きそうな顔に見えた。



「だって、LINEすら聞けなくて、ほとんど堤防でしか会えなくて…」


『…バカ。』



澪春が泣き出す前に、頬を優しく抓った。



「…うぅ」


『ごめん。まだちゃんと笑えねぇよな。』



澪春の抓った頬に手を当てる…


笑えるわけねぇよ。


本気で、兄貴のことが好きだったんだよな?


好きな人を思う涙なんて…何度見ても止められねぇよ。


ぐっと、澪春を抱き寄せると、俺の胸の中で声を出して泣きじゃくった。


まだ、時間がかかるだろう。


ゆっくりでもいいよな?

また、心から笑顔を取り戻せる日は。


ちょっとずつ…最初は苦笑いで良い。

作り笑いでもいいじゃねぇか。


絶対に笑わせてやっからよ…


澪春の頭を撫でながら、空をみつめる。


勝手に逝ってんじゃねぇよ…バカ兄貴。




ー夏翔 side endー