ジリリリリリリ
「愛音~!!!起きなさ~い!!!遅れるわよ~!」
「むにゃむにゃ...あぁわたひのおうじさま~やっといらしったの
ね...むにゃ」
「なに寝言言ってるの?早くしなさい‼」
「むにゃ...ええもちろん...わたしでいいなら...」
「いい加減にしなさ~~~~~~い!!!!!!!!!」
お母さんの怒声が部屋中に響き渡った。
「何よ...うるさいなぁ」
「うるさいなじゃないわよ‼時計見てみなさいよ‼」
目を擦りながら時計を見てみると...
「え~~~~~~っ!!!!!!!!
遅刻、遅刻だよぉ~~~~~!!!!!!」
今度は、あたしの叫び声が響き渡った...
「愛音‼ごはんは?」
「あーゴメン。時間ないから...行ってきます!」
急いで家を飛び出す。
「全く…。朝ごはんも食べないで…」
後ろからお母さんの声。
…無視しよう。
「おそ~~い!!!!」
外に出ると、なんと美梨花が待っていた。
「美梨花⁈待っててくれたの⁈」
「もちろん!うちら、親友でしょ?」
ニコッと笑った美梨花。神様だぁ~
「待たせてごめんね…」
「だいじょーぶだよぉ。わぁもうこんな時間!走るよ愛音!」
「えっちょっ、待ってぇ~~!!!」
美梨花を追いかけて、走り出す。
青木 美梨花。中学校のときからの大親友。
絵が上手で、足も速くて、勉強もできる自慢の親友なんだ。
「美梨花、速いよ~~~!!」
「このぐらい飛ばさなけりゃ、遅刻するよ?」
「あぁぁぁぁ……」
自業自得。
まさにこの言葉が、今の状況にはピッタリのようです…
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・・・・・・・・・
「はぁっ…はぁっ…」
息を切らしながら教室に滑り込んだあたしたち。
時計を見てみると、授業開始の2分前だった。
……ギリギリセーフ。疲れたぁ~
と、その時。
「ハハッ、昨日は簡単な数学の公式ど忘れして、今日はギリギリ遅刻
逃れるとか、マジ面白れぇ~」
大嫌いな声が聞こえてきた。
声のした方を振り返ると、ニヤニヤしているハルと目が合った。
続けて、
「おぉ~やってくれますねぇ藤澤~♪」
「相手にしたくねぇわこんなアホ」
「なんかいつもやらかすんだよね、だいじょーぶかな。このトロさ
どーにかなんないのかなぁ。超心配!」
ナル、ホシ、ヒジリの声も聞こえた。
ム・カ・つ・く~~~!!!!
「ハル、ナル、ホシ、ヒジリ、黙れぇ~~~!!!!!!!!」
あたしは思いっきり怒鳴った。
「なんだなんだ、騒がしいな~。…おい藤澤、うるさいぞ。もう少し静かにしろ」
教室に入ってきた先生に叱られてしまった。
「はーい…すみません…」
確かにちょっと騒ぎすぎたなぁと思い、大人しく席に着くと、あいつ
らの忍び笑いが聞こえた。
ーSEI4人組。
桐谷 晴、島川 成、相野 星、秋宮 聖の4人組のことで、女子に
物凄いモテる。
名前の読み方が同じだから、それぞれハル、ナル、ホシ、ヒジリって
呼ばれているんだ。
こいつらは決まってあたしを「おもちゃ」にする。
だからあたしは、こいつらがいくらモテても、大、大、大っ嫌いなん
だ!
「おーい藤澤、どうした?そんなに歯ぎしりしていたら歯医者行きだ
ぞ~?」
気がつくと、先生が手を止めて、知らぬ間に歯ぎしりしていたあたし
を不思議そうに見ている。あちゃ~…。
「美梨花ぁ~!」
あの後も数々の失態を犯したあたしは、帰る時刻になると真っ先に美
梨花の元へ駆け込んだ。
「も~ヘコミすぎ愛音~。あっそうだ!今度さ、近くのフルーツパー
ラー、2人で行かない?」
「えっフルーツパーラー⁈行きたい行きたい!!!」
「じゃあ今度の日曜日ね♪」
この時のあたしは、まだ知らない。
このあと、最初のハプニングが起こることを…
・・・・・・・・・
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「ただいまぁ~~~~!」
「あっ愛音!ちょっと話があるんだけど、いい?」
家に帰ってきてすぐ部屋に入ろうとするあたしを、お母さんが呼び止
めた。
何の話なんだろう…?
不思議に思いながらもリビングのいすに向かい合わせで座ると、お母
さんは唐突にこう言った。
「愛音。お母さんね、出張で1ヶ月ぐらい家を留守にするの。」
「ふーん…ってぇぇぇぇえええええええ~~~!!!!!!!!」
意味不明!バカなの、アホなの?あたしに一人暮らしさせるの?家に
置き去りにするつもり?
ん?でも待てよ。1人=何でもできる。
何でもできる=…自由を手に入れられる!素晴らしいじゃないか!
「うん!わかった!1人で留守番できるから、行ってきていー…」
「だいじょーぶよ愛音!」
お母さんのやけにテンションの高い声があたしの言葉をさ
えぎった。
「1人になる心配はないわ!お母さんの知り合いの桐谷さんとこの息
子さんに一緒に住んでもらうから!愛音と同い年よ!」
「はああああああああぁぁぁぁぁぁ???????!!!!!」