「ッゆき!!雪兎!!」
不意に響いた青葉の切迫した声に、店中の空気が張り詰める。
イスが倒れるのも構わず、居住スペースへ急ぐ。
青葉があんなに切迫した声で雪兎を呼ぶなんて、嫌な予感しかしない。
勢いよくドアを開け、雪兎の部屋を覗くと、ベッドに膝を付く青葉の背中が見えた。
「青葉、雪兎になにが!!?」
「ッ…??」
青葉の肩越しに、覗き込んだ瞬間、雪兎は急に目を覚まし目をパチパチさせていた。
そして、不思議そうな顔を隠そうともせず、俺と青葉の顔を交互に見つめる。
「あおにぃ、なおにぃ…?」
「ゆき、何度呼んでも起きなかったんだよ?」
「そう…なの?」
目は覚ましているものの、口調がいつものそれと全く違う。
まるで、雪兎がまだ小学生の頃のような口調だ。俺たちを兄と呼ぶのも、ずっと昔のことで最近はずっと名前で呼ばれていた。