直矢side

春川から逃げるように2階へ上がっていった雪兎を見送り、春川との話に戻る。

黒字が維持出来ているのはいいものの、この水準を維持するのも一苦労だ。

「立地は悪くないと思うけど、やっぱり周りの店との客層がズレてるのも、新規顧客に結びつかない原因よね」

「移転しろと?」

「看板出すだけで顧客が少しでも入ってほしいと思うなら、ね?」

移転費や、こんな都合のいい間取りが早々見つかるかという手間を考えると頭が痛い。

だがいつまでも、野本さんに甘えているわけにも…。

「春川さん、はいコーヒー」

「わぁ、ありがとう。瑞谷くん」

「直矢、雪兎のご飯作ってくるから」

青葉がコーヒーを出しつつ、そう言うとすぐに居住スペースへ消えていく。

また春川が口を開き、経営の話が続く。