「雪兎、あなた会うたびに男の子みたいになってくわね」
オレの顔を覗き込んでくる女性は、直矢たちの同級生で、当時の月掛高校サッカー部マネージャーだった、春川 菜々美さん。
店の経理とか手伝ってて、月に1回くらいこうして店に顔を出しに来る。
学校の時間とかに被ってなかなか顔を合わせる機会はなかったのに、思い出した今日に限って会うなんて…。
「ほっといてください。菜々美さんには関係ないです!」
「なによ、まーだ怒ってんの?雪兎可愛かったわよ」
「春川」
直矢が止めてくれたけど、苦手なものには変わりない。
敵前逃亡は癪に障るものの、ここは逃げるが勝ちだ。
さっさと2階に上がり、なんかドット疲れが押し押せてくるのを耐えきれずにベッドに横たわる。
「スゥ~はぁ…」
深く息を付けば、何故か疲労感が体を襲ってきて、指一本すら動かせなくなる。
…あ、れ………この感覚、まずいんじゃ…。
しまったと思うよりも早く、急激な眠気に襲われ、抵抗する間もなく目を閉じた。