思わず後ずさると、小月先輩に肩を持たれる。

逃げ場を失った…。

「ゆきくんの浴衣姿、見てみたいな」

「メイクからヘアアレンジまでやりたいな」

「嫌ですよ」

前から後ろから、すごく楽しそうに笑いながら圧をかけてくる。

苦手な人の顔がすぐ浮かんで、思わず表情を歪ませた。

「雪兎ー!…けんか?」

「違う。ほら、帰りますよ」

「あー雪兎くん…」

心底残念そうな顔されても、嫌だって言ってるんだから引き下がってほしい。

彰矢と駅で分かれ、店に入る。

「おかえり」

「おかえり、ひさしぶりね。雪兎」

「ッウゲ…ただいま」

思わず心の声が先に飛び出した。よりにもよって、顔が浮かんだその日に直接顔を見ることになるなんて。