頭を下げ続けていると、ゆきくん、と優しく呼ばれる。
顔をあげると、小月先輩はいつもの笑顔を浮かべていた。
「ありがとう。そこまで考えてくれて。…元々ね、私戸木先輩にマネージャーやらない?って声をかけてもらったんだ」
小月先輩はグランドの外周を走る1年を眩しそうに見つめる。
「去年もね、春の大会で3年生が引退してから練習は自主練になったの。その時から今の2年は二木くん以外すぐに来なくなったんだよ」
「…そうだったんですか」
「でも、戸木先輩たちはいつも練習してた。グランドが使えなくても近所の公園や、河川敷を使って。…だから、私ね2年のみんなにはあんまり関わりないの。おかしいでしょう?」
そういいながら苦笑いする小月先輩は少しだけ寂しそうで、もしかしたら誰よりも3年生の引退を悲しんでいるのは、小月先輩なのかもしれない…。