まだあまり混んでいない居酒屋に、2人の姿はあった。


「そういえば、柑菜さんは教育なのね、私、この前絵を見たんだけど、すごく惹きつけられたわ。どうして絵画に来なかったのかしら」


2人はとりあえずお酒と野菜コロッケを食べている。


涼は緊張で、あまり食が進んでいない。


「それは……あいつ、中学の頃怪我したんです」


柑菜のことを考えると、このことは極力人には言いたくない涼。


そのために、大雑把な返事になってしまう。


「そうなの……でもそれでもあれくらいの絵が描けるなら、教育は勿体無い気もするわ。教員免許ならうちでも取れるし」


美鈴はあくまでも、恋のライバルとしてではなく大学の先輩として、柑菜のことを考えていた。


「それ、本人に言ってあげてください」


涼は、力強い目で、訴いかけるように言う。


美鈴はその目を見て、適当な気持ちではないことを感じ取った。


「なんだか似てるのね……」


美鈴は、涼に聞こえるか聞こえないかくらいの声の大きさで、そう言った。