「先輩、どうしてここに?」
涼は、疑問を先輩に投げかける。
「ここのケーキ屋のパティシエ、私の幼馴染なの、時々手伝いに来てるってわけ」
柑菜は、ようやく謎が解けた。
ケーキの匂いの正体は、ここに長いこといるから、何度もすれ違ったのも、ここで手伝いをしていたから。
「だからいつもここのケーキ食べてたんですね」
涼は、ずっと思っていたことを言葉にした。
「そうね」
涼との話を終え、美鈴は、柑菜の方を見て微笑む。
柑菜はその笑顔を見て、一気に緊張が解けた。
「いつも買いに来てくださってありがとう、まさか涼くんの双子の姉だったなんて」
「ここのケーキ、すごく好きなんです。食べると幸せな気持ちになれるから」
柑菜は、一瞬ケーキ屋の奥を確認した。
しかし、そこには誰の姿も見当たらなく、気配も特になかった。