「ねえ、お願いね」
「はいはい」
柑菜の頼みを聞くため来た涼であるが、実はもう1つここに来る理由があった。
もちろん、それを柑菜には言っていない。
とにかく、それを確かめるために涼はここまで足を運び、自分の目でそれを見たかった。
「いらっしゃいませ、あら、涼くん?」
「先輩」
2人の前に立っているのは、いつもの彼ではなく、初めて見る女の人。
そしてその人は、なぜだか涼のことを知っている様子である。
「知り合い?」
「大学院の先輩だよ」
「そうなんだ」
柑菜は、はじめましてとその人に挨拶をする。
そして、この人がきっとあの帽子の人なんだと直感的に思う柑菜であった。