「ねえねえ、そういえば好きな人いるの?」


「……どうだろね」


はぐらかす涼に、これ以上しつこく聞こうとはしない柑菜。


涼の性格上、どうせ聞いても答えてくれないと分かっているからだ。


沈黙のまま歩く2人。


人通りもかなり少なくなり、住宅地に来ると、柑菜たちは自分たちの家の前を通り過ぎた。


少し歩くと、いつもの坂道にたどり着く。


「この近くなの」


「こんなとこにあるのか」


住宅街の中で、涼はまさかと言うような声色でそう言う。


そして、いつもの道を曲がると、柑菜の好きなケーキ屋が見えてきた。


テンションが上がってきた柑菜とは正反対に、涼は落ち着いている。


「なるほど」


建物の外観を見て、涼はそう呟いた。