金曜日、柑菜と涼は大学の門で待ち合わせをした。


ーーそういえば、こうして待ち合わせをするのって初めてかも。


これから登校してくる人、帰る人、同じく誰かを待っている人、多くの人で賑わっている。


この中で、家族で待ち合わせをしている人はどれくらいいるのだろう、もしかしたら自分たちだけではないか、と柑菜は思いながら涼を待った。


「お待たせ」


眠そうな涼が、とぼとぼと歩きながらやって来る。


「行こっか」


2人は、家の方向を目指して歩き始めた。


途中、街を歩く中で、何組かのカップルとすれ違う。


カップルは柑菜たちと違って、どこか恥ずかしそうにしていたり、腕を組んでくっついていたりしている。


「私たちってカップルに見えるかな?」


「側からはそう見えるかもな」


否定もせず、やんわりと答える涼。


特に話すこともなく、柑菜は町の音に耳をすませて歩いた。


どこからともなく、鳥の鳴き声が聞こえてくる。


ふと、そういえば、この間の柑菜の質問の涼の答えを聞いていないことを、柑菜は今思い出した。