「起立、礼」


そんな声が響くと、生徒たちがわらわらと帰りの準備を始めた。


今日はいつもより長いような短いような、不思議な時間だった。

珍しくお昼までの短縮授業だからってのもあるけど。

たぶん、それだけが理由じゃない。



……怜佑。


黙々とカバンを肩に掛けるその背中を見つめる。



『梓ちゃん、こっち来て』


2時間目が終わった休み時間、あたしはなずなに連れ出された。

そして、流れのままにたどり着いた先で、言われたんだ。


『滝川くん、きっと勘違いしてるんだよ』

って。


『たぶんね、梓ちゃんからチョコもらえなくて落ち込んでるだけだと思うんだ』


なずなは優しいから、励ましてくれてるんだろうけど。


『……そうかなぁ』


あたしには、もう何がなんだかよくわからなくなっていた。