「ね、もう王子には渡した?」


口許に手をやり、密やかに訊ねると、白い頬がピンク色に染まった。


「うん! ……さっき登校中にもう渡しちゃった」

「えー、すごいじゃん!」


胸の前で手を合わせながら、あたしは眠たそうに席に座っている王子をこっそりと見る。


王子、絶対喜んだだろうな〜。


その姿が簡単に想像できるんだから、自分でもちょっと恐ろしい。


「はい、ナツ。チョコレート」

「わ、ありがとな!」


用意していたトリュフチョコを渡すと、ナツは目を輝かせて受け取ってくれた。


やっぱりナツは素直でいいヤツだ。

ここまで喜んでくれたら純粋に嬉しいし、作った甲斐があるなあって思わされる。




──それから、よく喋る女の子たちにも渡して、クラスのサッカー部の子にも渡した。


憐くんには……なずながいるから渡すのをやめておこうと思ったけど。


『だめだよ、渡してあげて』


そうなずなが言ってたし……。