「ん。……ああ!」
……え。
『ああ!』って。
「そういや今日バレンタインやん」
ちょ、そんな世紀の大発見しましたみたいな顔しないでってば……!
……はぁ、コイツ。怪しいとは思ってたけど、やっぱり忘れてたのね。
なんだかちょっと複雑〜……。
「つーか、みんな毎年毎年よーやるわ。お菓子メーカー大喜びやで」
「はいはい。アンタには女の子の気持ちなんて一生わかりませんよーだ」
……もうっ。
いっつもロマンの欠けらも無いこと言うんだから。
「やっぱり傘入れてあげない」
「は? 待てって」
「怜佑が悪い」
「ごめんって。な? 梓。梓ちゃん?」
振り回されてばっかりなんだもん、たまには意地悪言ってもいいよね。
あたしは自然と上がってくる口角を抑えながら、早足で駅の中へ入っていった。