「ただの幼なじみだから!」



〝幼なじみ〟


あたしと怜佑の関係は、それ以外の何物でもない。

12年前、怜佑があたしん家の向かいに引っ越してきた時から変わらない、紛れもない、事実。

なんだけど──。


「そーや。それ以外にありえへんやろ?」


むっ。

なんか怜佑に言われると、ちょっとムカつく。



「はいはいそうですかー」


ナツはあたしたちの反応がおもしろくないのか、つまらなそうに唇を尖らせた。

とりあえず諦めたみたい。

ホッと一息ついた、その直後。


「それより吉野、お前家こっちやっけ?」


鋭い瞳が、不服顔の彼を一直線に見下ろした。



「そっ……それはぁ……」


さっきまでと一転。

ナツの額には、冷や汗が浮かんで見える。


言われてみれば。ナツの家、確か逆方向だったはず……。