「梓せーんぱいっ」
ドキィッ。
その時背後から声をかけられて、心臓が止まりそうになった。
「美保ちゃん!」
「覗き見なんて趣味が悪いですね?」
なんて、きゅるんと上目遣いで見てくるのは、さっきまで怜佑と話していたはずの美保ちゃん。
怜佑は……靴箱からいなくなってるから、
あたしが調べ事をしてる間にきっともう部活に向かったんだと思う。
……というか。
「覗き見とか、そんなつもりはなくてっ」
「わかってますよ」
焦るあたしに、美保ちゃんは「ちょっとからかっただけです」と口角を上げた。
「うう……」
あたしがいるの気づいてたんだ……。
ってか先輩なのに後輩にからかわれるって、ちょっと情けな。
なんだか切ない気持ちになったその時、
「でも、話が早くなったので助かりました」
と、美保ちゃんが囁くように声を出した。