「なずなー、靴箱辺りで待ってるねー!」


あたしは鞄を肩にかけ、本日掃除当番だというなずなに声を飛ばす。


「うん、了解!」


答えてくれた彼女に手を振り、一人靴箱へ足を進めた。


……ん。

そういやあたし、ナツから預かったプリントちゃんと入れたよね?

なんだかふと心配になって、鞄を漁る。


「……お、あったあった」


よかった。ちゃんと入って……。

あれ?

階段を下り、丁度昇降口に続く廊下に足を踏み入れた時だった。

壁に寄りかかって立つ見覚えのあるシルエットが目に映って、「あっ」と声が洩れた。

怜佑も王子とナツ待ってるのかな?


「怜す──」

「滝川先輩!」


びくっ。

声をかけようとしたのとほぼ同時、明るく響いた声と共に怜佑の元へ一人の女の子が駆けてきて。

無意識にもあたしは顔を背けるようにして二人から身を隠していた。