「でも、すごいよ! 渡すのって勇気いると思うし」
泣きたいような気持ちになっている中、なずながあたしの腕を掴んでそう言った。
「そうかなあ?」
「うん、すごい!」
「……なずなさぁ。もしかして、王子に渡すの初めて?」
なんだかふとそんな気がして訊いてみたんだけど、どうやら正解だったらしい。
一瞬目を丸くしたあと、なずなは赤くなった顔をこくこくと動かした。
「小学生の頃は、やっぱり恥ずかしくて……」
「へーえ。そっか。それは緊張しちゃうねぇ」
これが初めてのチョコ、かぁ。
ふふっ、初々しくてかわいいなぁ。
ってことは、なずなにとって今年は特別なバレンタインになるってことか。
ひゃ〜っ、いいなぁそういうの。
……いや、なずなだけじゃない。
今年はあたしも……。